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漢方薬の処方について

漢方薬を積極的に使って、治療致します

漢方薬と聞いて何を連想されますか?

「効果マイルド!」

「副作用が少なそう」

副作用が気になる西洋薬に比べて、比較的ポジティブなイメージを持たれています。多少効果が弱くても、漢方薬を飲みたいという方もたくさんいらっしゃいます。

当ページでは漢方薬のメリット・デメリットや、しられざる漢方薬の実態にも迫ってみたいと思います。

漢方薬のメリット

日本の医療は西洋医学の影響を強く受けていますので、一般的には西洋薬を多く用います。西洋薬は化学合成された物質で、熱や痛みなどの症状を抑える薬が多く、根本的に治す作用はありません。抗がん剤のように、直接ガン細胞をたたくというお薬もありますが、症状を抑えることで本人の快適性を増し、その間に自然回復を待つという仕組みの薬が主です。

西洋薬はツラい症状を早く抑えるというメリットがありますが、副作用というデメリットも避けられません。花粉症の薬のように、くしゃみや鼻水は止めるけど眠気も多い。副作用の大小や多寡(多い少ない)はありますが、バランスを考えながら治療するということですね。

反面、漢方薬は薬のコンセプトがガラっと違います。医療用漢方薬を製造しておられる「クラシエ」さんのホームページから一部引用させて頂きました。

さまざまな生薬の組み合わせによって、その人の体質に適したからだの症状に対応できる漢方薬は、何千年もの歴史があり、治療効果のあるものが今日も医薬品として用いられています。

漢方の基本は、“人間の体も自然の一部”という考え方です。“病気ではなく病人をみる”、という考えで、体の一部分だけにスポットをあてるのではなく、体全体の状態のバランスを総合的に見直すといった特徴があります。また、体質や生活習慣などから見直し、整えていきます。なお、漢方は、病名がついていない不調(未病※)にもアプローチできるのも大きなポイントです。

病気の症状だけではなく、人間そのものにスポットを当てる点が大きく異なります。

西洋薬では症状(熱、痛み、高血圧、高脂血症など)にスポットライトを当てますので、飲む人の体質や体力などは基本的に考えない仕組です。その点漢方薬は体質や体力などを先に考慮し、その後に症状という決め方です。根本的に発想が違います。

例として西洋薬と漢方薬両剤の添付文書(薬の説明書のような文書)を見てみましょう。

  1. 西洋薬 アムロジピン(血圧降下剤)の適応症(適応となる病名)=狭心症、高血圧症
  2. 漢方薬 大柴胡湯(読み方:ダイサイコトウ)の適応症=比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなどを伴うものの次の諸症:胆石症、胆嚢炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病、ノイローゼ、不眠症。

いかかでしょうか?西洋薬は症状のみですが、漢方薬は飲む人に注目した多彩な適応症だとご理解頂けたと思います。長い時間をかけて生き延びてきた様々な生薬を配合し、その人の体質に合った薬を選ぶことが出来るのが大きな魅力ですね。

 

漢方薬のデメリット

人間と病気の2つに注目したユニークな薬剤である点はご理解頂いたかと思いますが、残念ながらメリットばかりではありません。

副作用が少ないイメージは強いですが、体質などに合わないとちゃんと?副作用は発生します。有名なのが「小柴胡湯(ショウサイコトウ)」で起こる”間質性肺炎(かんしつせいはいえん)”ですね。

小柴胡湯は慢性肝炎治療に有名ですが、風邪が長引いた時などにも処方されます。そのような一般的な漢方薬が重大な副作用を起こす事は信じがたいのですが、実際に起こっていますので注意が必要です。漢方薬だから手放しで安心ではないとご理解下さい。

他にも西洋薬と比べて、症状を抑える速効性は落ちるようです。今までお話してきた内容をまとめてみました。

  漢方薬 西洋薬
効果 一般的にはマイルドだが、証(しょう)が合えば速効性も期待できる。 効果に関しては様々で、ひと言では言えない。基本的に効果と副作用は比例傾向
副作用 一部に重篤な副作用はあるが、比較的マイルド 重い副作用もあるので、注意が必要な薬がある。
適応症 患者さんの体質や体力に着目 病名のみ
速効性 一般的にはマイルドだが、証(しょう)が合えば速効性も期待できる。 一般的に効果発現は速い
ジェネリックの有無 発売メーカーは少ないが、ある。 有り
     

漢方を選ぶポイント

西洋薬に比べて、患者さんの体質・体力などに着目しているのが漢方薬であると申し上げました。漢方治療独特の考え方「証(しょう)」について、簡単に解説しましょう(クラシエホームページより一部抜粋させて頂いています)。

証とは、自覚症状及び他覚的所見からお互いに関連し合っている症候を総合して得られた状態(体質、体力、抵抗力、症状の現れ方などの個人差)を あらわす漢方独特の用語で、治療の指示(処方の決定)につながります。言い換えますと、からだが病気とどんな戦い方をしているかをみるもので、 体質や抵抗力、病気の進行度などをあらわします。漢方では、その時のからだの状態を次のような観点から判断していきます。

例えば、
●冷えや寒さなどを感じているのか、ほてりがあって暑がっているのか。
●体力があり病気に対する抵抗力がある状態なのか、体力が低下していて病気に対する抵抗力が弱い状態なのか。
●かぜの場合には、かかったばかりなのか、かかってから何日か経過して胃や腸の具合も悪くなっているのか。

このように、からだ全体の状態をつかみ処方を決定することを「証をみる」、「証を決める」と言います。

漢方では、証に合った薬を使うことにより病気を治します。ですから、医師に診断してもらう時または薬局でお薬をお求めになる時は、できるだけ詳しく症状をお話していただけると、からだに合ったお薬を服用することができます。

漢方薬メーカー「クラシエ」さんのサイトに、自己診断ページがありましたのでご紹介します。処方自体は医師がしますが、知識を身につけて頂き、ご自身に合う漢方薬を見つけて頂くのが大切です。

クラシエ「漢方薬の自己診断」

当院で採用している漢方薬とその効果

現在(2022年6月時点)で約15種類の漢方薬を採用。一つずつご紹介致します。

お薬の名前 適応症
No1.葛根湯(カッコントウ) 自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の症状:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん

No2.葛根湯加川芎辛夷
(カッコントウカセンキュウシンイ)

鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎
No14.半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

みぞおちがつかえ、時に悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便、または下痢の傾向のあるものの次の症状:急・慢性胃腸カタル、醗酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症

No16. 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

気分がふさいで、咽頭、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せきしわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症
No19. 小青竜湯(ショウセイリュウトウ) 下記疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙:気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
No23.当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症:貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症

No29. 麦門冬湯(バクモンドウトウ) 痰のきれにくい咳、気管支炎、気管支喘息
No39. 苓桂朮甘湯(リョウケイジュッカントウ) めまい、ふらつきがあり、または動悸があり尿量が減少するものの次の諸症:神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛
No43.六君子湯(リックンシトウ) 胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく貧血症で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
No48. 十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ) 病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血
No50. 荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ) 蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび
No62. 防風通聖散(ボウフウツウショウサン) 腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘
No68. 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ) 急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛
No107. 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)

疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇のある次の諸症

:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

No137. 加味帰脾湯(カミキヒトウ)

虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症

(赤字は耳鼻咽喉科関連の病気)

到底読めないような名前ばかりですが、適応症は詳しく書いてありわかりやすく、ユニークですね。

我が国の漢方薬のトップメーカーである「ツムラ」も、約140種類の医科向け漢方薬を製造販売しています。ご興味があれば、是非ネットなどでお調べ下さい。

 

葛根湯や麻黄附子細辛湯についての動画はこちらから

 

 

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