『健康ブログ~いつものクスリがない!? 医薬品流通の大問題とは?』
三重県四日市にあります、足立耳鼻咽喉科がお届けする健康ブログです。当ブログでは耳鼻咽喉科領域に限らず、もっと広い視野でより快適に生活できる情報を発信します。また流行りの健康情報ではなく、基本に忠実な情報をお届けしたいと思っています。末永く宜しくお願い致します。
(専門外の病気についての詳細は、各専門科でお尋ねください)
こんにちは、健康ブログ編集長です。産地偽装や不適切な製造をしていた事が明るみに出る事件は後を絶ちませんが、私たちの口に入るものに関してはちょっと困りますよね。結局はコストを落として、より利益を得たいという強欲さが原因です。本日はそんな事件が発端となって大きな影響を受けている、私たちにとってなくてはならないものの話です。
本日のテーマは、
「いつもの医薬品が手に入らない!? どうして? 」
そうです、なくてはならないものとは「薬」です。以前当ブログでも発信しましたが、さらに危険な状況になってきています。各メディアでも少しづつ記事として発信されていますが、他の大きなニュースにかき消されて皆様の元に届いていないのが現状。ですので改めてブログ記事にすることにしました。
医薬品に何が起こっているのか?
今月12日のネットニュースでは、全医薬品の約23%の製品で何らかの出荷調整品、供給停止問題が起きているとありました。また別のニュースでは昨年8月末時点の調査(日本製薬連合会)を引用し、なんと4234品目、調査対象15,036品の28.2%が出荷停止、出荷調整との事(昨年より7.8ポイント増加)。
メディアにより若干数値が違いますが20数%~30%が供給に支障をきたしている状況のようで、いまだかってなかった事態になっています。
通常ですと体調が悪くなれば医療機関を受診し、医師はクスリを処方し、患者さんが飲んで良くなるというパターン。こういう今まで当たり前だった構図が、今は成り立たなくなっている。
軽い病気で、クスリを飲んでも飲まなくてもどちらでもいいような状態なら問題はないと思いますが、そのクスリが本当に必要な方は死活問題になります。生命の維持が国民の基本的な人権であることは周知の事実ですが、その基本的な人権を脅かす大変な状況なのです。
供給危機の原因とは?
なぜかメディアで取り上げられることがあまり多くなく、一般の方は原因が何かわからないのではないでしょうか? 私は医療法人で経営企画や広報の仕事以外に医薬品の仕入れ窓口もしていますし、元は医薬品卸の営業マンでしたので、そのあたりをご説明していきたいと思います。
問題の根っこは国の厚生行政のやり方にも原因があると思っていますが、そこはちょっと置いておいておきます。
事の発端は、2020年に発覚した、ジェネリック医薬品メーカーの「小林化工」の不正です。水虫のクスリに睡眠薬の成分が混入し、全国200人以上に健康被害が出たこと、さらに国の承認していない不正な製造工程で医薬品を製造していました。長年にわたる不正製造を組織的に隠ぺいした悪質な企業体質が明るみに出ました。
これを受けて行政が指導を強化し、その後ジェネリック最大手メーカー「日医工」を始め、各メーカーで芋ずる式に不正製造が発覚したのです。その結果、該当メーカーの製品は製造停止となる場合があり、同じ薬効の他メーカーにまで飛び火し、様々なメーカーの医薬品が次々に供給不安に陥ったという図式になりました。
ジェネリック医薬品とは、特許切れの医薬品を他のメーカーが同じように製造販売する医薬品のこと。
ジェネリック医薬品は、成分によって製造メーカーの数が違います。薬価(医薬品の定価みたいなもの)が高く売れる医薬品は多くのメーカーが製造、古いクスリで薬価の安い品目は新規参入もなく、既存メーカーも早く打ち切りにしたいというのが本音。今回のような時には、流通的にはリスクが高くなりがちです。
わかりにくいので、一例を挙げてみましょう。あるジェネリック医薬品メーカーの”ロキソプロフェン”が不正製造で行政処分を受けたとしましょう。その製品の供給は、国に今後の対応策を提出し認可されるまで一旦ストップします。同じロキソプロフェンを他のメーカー5社が製造していたとすると、代わりにその5社の中の製品を処方すればいいと考えますよね。
しかしながら、そういう事態になると他の5社のロキソプロフェンは出荷調整をかけて自由に買えなくします。つまりいつも使ってくれる医療機関・薬局を守る為に供給を制限するという意味ですね。この仕組みは先発メーカーも同じです。結果として、たまたま運悪く不正製造をしたメーカー製のクスリを使っていた為に、ロキソプロフェンを供給してもらえなくなるという事です。
実際はもっと様々な理由が絡んでいますが、わかりやすくする為に割愛しています。小林化工、日医工の不正問題は業界では大きなニュースで、今も医薬品流通に大きな影響を残しています。
医療機関・薬局の現状
この問題は「製造者の倫理観」を問う問題ですが、それよりも一番大きな問題は「本当に必要な人に、クスリが届かなくなる恐れがある」ということ。場合によっては命に係わる大問題ですので、もっとメディアは報道すべきだと思いますし、国も関わるべきだと思いますが・・・。
では実際にクスリを扱う医療機関や薬局は、このような事態の中どう対応しているのでしょう?
科目による差もありますが、およそ3分の1近くの製品に影響が及んでいますので、本当に大変だと思います。医師も処方を大幅に変える必要もありますし、変えるクスリすらない場合もあり、治療に支障が出ています。また薬局においても、医薬品を納入頂く卸さんに依頼する、クスリの在庫がある他の薬局へ行ってもらう、処方を変えてもらうよう医師に話すなど、涙ぐましい努力をして何とか頑張っています。
理由が明確にわからない患者さんから叱責されることもあるでしょう。非常にストレスの多い毎日だと察します。
当院はどうかと申しますと、おそらく70%以上のクスリに影響が及んでおり(耳鼻科は影響大)、毎日とは言いませんが何らかの供給問題が起きています。
「(卸)悪い知らせですが、メイアクトがちょっとヤバくなってきました・・・」
「(私)ええ~!!何とかならんの?」
こんなやり取りを卸担当者の方と毎日やりあっています。メール、電話もしょっちゅうで本当に申し訳ございません。院長に処方を変えてもらったり、日数を抑えてもらったり。もちろん患者さんにもお詫びすることばかりです。私も業界は長いですが、こんなに混乱が続くのは経験がありません。
それに加えて、コロナ感染を始めとした感染症が流行しており、抗生物質や咳止め、痰切りなどのクスリの処方自体もかなり増えているようです。当院でも行っている免疫注射に用いる薬剤も消費量が増加しているとのこと。処方量が増えれば品薄・品切れに拍車がかかりますね。
患者さんにご協力頂きたいこと
医薬品の危機的状況がなぜ起こったのかについて、お話させて頂きました。
当院も医薬品確保に最大限尽力していますが、残念ながら以下のような事が予測されますので予めお伝えしておきます。
- メーカーが変わる
- 処方日数を減らす(1週間分欲しい→3日分に短縮する)
- 入荷困難な薬剤は、処方箋を発行する(四日市院の場合)
- どうしても必要な薬剤でない場合、処方を一時的に見合わせる
- 免疫注射の中止
止む無くこのような措置を取らせて頂くこともありますので、なるべく多くの患者さんに適切な医療が出来る事を念頭に、「クスリの処方に関しての変更など」をお願いする場合がございますのでご理解頂きたいと思います。
まとめ
最後までお付き合い頂き、有難うございました。本日は「医薬品の供給」というテーマでお話を進めてきました。いかがでしたでしょうか? 私たちの生活に影響があることですし、前職の話題でしたので、ちょっと長くなってしまいました。
供給問題の理屈がわかったところでどうしようもないのですが、知っているのと知らないのでは大きな差があると考えています。起こった事は変えられませんので、何とか乗り切っていきたいと思います。ご協力宜しくお願い致します。
四日市院は院内処方、伏見院は院外処方と事情は異なりますが、最善を尽くします。
それでは、また来週!
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◇ 編集後記
話は変わりますが、夏といえばかき氷、かき氷といえば白熊君ですよね!私はファミマコラボの白熊君が大好きです。セブンもありますが、トッピングフルーツの種類が多いんですよね~。結構高いんですが、夏しか食べないので豪勢に頂いています。
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<当ブログ記事に関しての注意>
・当ブログ記事は健康全般についての情報発信を行っております。専門外に関する記事もございますので、当院に連絡を頂いてもお答え出来ない場合がございます。詳細は専門の医療機関にてお尋ね下さい。
・また当サイトの記事は、健康を保証するものではございません。ご理解・ご了承下さいます様お願い申し上げます。
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