甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍とは?
甲状腺は首の前下部、のどぼとけの下にある臓器です。蝶が羽を広げたような形で、気管のすぐ前方にあります。
甲状腺は、甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌しています。甲状腺ホルモンは各器官の働きを活発にしたり、新陳代謝を調節する役割を持っています。この甲状腺にできたできものを総称して甲状腺腫瘍とよびます。
甲状腺腫瘍には大きくわけて良性のものと悪性のものがあり、おのおのについて、説明致します。
良性腫瘍(りょうせいしゅよう)
腺腫様結節(せんしゅようけっせつ)、腺腫様甲状腺腫
これらは厳密には腫瘍ではなく、甲状腺の正常組織が過剰に増殖してしこりとなったものです。しこりが単発のものを腺腫様結節、多発するものを腺腫様甲状腺腫といいます。
基本的に治療は不要ですが、大きさに変化がないか、半年~1年おきに経過観察をします。甲状腺癌の合併が疑われる場合や、サイズが大きく審美的に問題となる場合は手術で摘出することもあります。
濾胞腺腫(りょほうせいせんしゅ)
良性腫瘍で、組織学的(顕微鏡で見たとき)に濾胞状の構造をしていることからこう呼ばれます。日本人に多い腫瘍で、ゆっくりと発育します。超音波や細胞診で診断をします。基本的に治療は不要でサイズに変化がないか外来で経過観察をしていきますが、「濾胞癌」が否定できない場合は、確定診断と治療を兼ねて手術で摘出が必要となる場合があります。
甲状腺嚢胞(こうじょうせんのうほう)
ほとんどは、前述の腺腫様結節、腺腫様甲状腺腫が変性ししこりの内部に液体がたまったものです。超音波検査で診断可能です。通常治療は不要で、外来で経過観察となります。
プランマー病
甲状腺良性腫瘍は、ほとんどがただのしこりで、機能を持ちませんが、甲状腺ホルモンを分泌する腫瘍をプランマー病と呼びます。プランマーとは初めてこの病気を報告した方の名前です。
腫瘍から甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、バセドウ病のような甲状腺機能亢進症の症状を起こします。心拍数の増加や血圧の上昇、不整脈、多汗、手の震え、情緒不安定、不眠症、体重減少などの症状があらわれます。
診断には放射性ヨウ素によるシンチグラフィーという検査で、腫瘍へのヨウ素の集積を確認することで診断できます。治療は腫瘍のサイズにより、手術、PEITというアルコール注射治療、放射性ヨウ素内用療法などが選択されます。
悪性腫瘍(あくせいしゅよう)
甲状腺癌(乳頭癌)
甲状腺癌は組織の特徴によって、乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌に大きく分類されます。このうち乳頭癌が最も多く、甲状腺癌のうち90%以上を占めます。
甲状腺癌の特徴としては女性が男性よりも多く発見されます。
年齢は30-50代の比較的若い女性に多くみられます。他の部位の癌に比べると病気の進行が非常にゆっくりで、生命に関わることが少なく、予後は良好な癌です。ただし一部では悪性度の高い癌に変化したり、進行が早いものもあります。
検査の方法について
甲状腺癌は痛みを伴わないので、首のしこりで気が付いたり、検診のエコーで偶然発見されることが多くなっています。癌が進行すると、甲状腺のすぐ近くを走行している反回神経(声帯を動かす神経)の麻痺を起こし、声がれが出現します。
診断にはまず超音波検査を行います。悪性が疑わしい場合は、細い針を刺して細胞診検査をして診断を確定します。
治療について
治療は、基本的には腫瘍と甲状腺周囲のリンパ節を掃除する手術を行います。
リンパ節転移の状況によっては、首全体のリンパ節を掃除する場合もあります。手術後は再発がないか外来で経過を見ていきますが、術後の予後は他の癌とくらべて良好です。