舌下免疫療法について
スギ花粉症・ダニアレルギーでお悩みの方へ
注意!! 花粉が飛散し始める時期からの治療開始は出来ません。毎年花粉症で苦しむ方、11月末までに治療を始めましょう!
鼻水・鼻閉・くしゃみ・目のかゆみ、耳のかゆみ、咳…。いらいら感、思考力の低下、疲労、睡眠障害や外出を控える事も・・・。
こんなつらい花粉症・ダニアレルギーですが、今までは対処療法(出てきた症状を抑える薬をのむ)しか方法がなかったのですが、舌下免疫療法では”完全に治す”ことも夢ではなくなりました。
舌下免疫療法について
舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)という言葉自体が仰々しくて理解しにくいイメージを受けますが、極めてシンプルな治療法です。
舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法の一つです。アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因であるアレルゲン(原因物質)を少量から服用することで、体をアレルゲンに慣らし、根本的な体質改善が期待できる治療法です。
治療効果
今までの統計では、
舌下免疫療法を受けたスギ花粉症の方の約80%の人が効果を実感、約30%の人は内服薬がいらなくなりました!
つまりくしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみから解放されて、もう通院の必要がなくなる治療法だということです。
また推奨服薬期間が3年~5年と長いのですが、服用後半年で効果を実感した方もいらっしゃいます。
全員に効果があるわけではありませんが、舌下免疫療法に挑戦して良かったというお声をたくさん頂戴しているのも事実です。
ご心配な点~続けることが出来るの?
とは言え治療期間が長いなあ~という印象をお持ちかと思います。確かに早ければ半年くらいで効果を実感出来るはいえ、3年以上継続するのは大変でしょう・・・
舌下免疫療法にご興味のある方全員が心配される点ですが、服用方法も簡単ですし、習慣化されれば意外と継続率が高いのもこの治療法の特徴です。
今までは皮膚に注射する治療法(皮下免疫療法)で、注射による痛みの問題、頻繁に通院しなければならないという課題があり、あまり普及していませんでした。しかし「舌下免疫療法」は口の中で溶けるラムネのような治療薬(口腔内崩壊錠)を舌の下に保持しその後飲み込む内服剤であるため、注射のような痛みがなく自宅で服用できます。通院回数も月1回と、注射の治療に比べて少なく済みますので治療を続けやすくなっています。
舌下免疫療法で治療できるアレルギーの種類
舌下免疫療法は全ての原因物質(アレルゲン)に対して治療可能というわけではありません。現時点では、
スギ花粉
ダニアレルギー
今後増える可能性はありますが、現状は上記の2つのみです。
注意点
- この治療法は原因物質のエキスが入った治療薬を、毎日服用して頂きます。これを最低3年間続け(3~5年が推奨)、この3年間は毎月1回必ず通院が必要です。ですので患者さん自身の治療に対するご理解と、毎日続ける根気が必要な治療法です。
- アレルゲンを投与することから局所や全身のアレルギー反応がおこるおそれがあり、まれに重篤な症状(アナフィラキシー)が発現する可能性があります。
そのため初回の服用はクリニックの中で行います。その後30分間はクリニックの中でお待ち頂き、副作用が起こらないか確認する必要があります。またその1週間後に必ず受診して頂く必要があります。- 気管支ぜんそくで治療を受けている方、妊婦の方はこの治療を受ける事が出来ません。高血圧でβ遮断薬をのまれている場合は薬の変更が必要です。また口の中が傷ついていたり、歯医者さんで治療している場合は治療の中断の相談が必要です。
- この治療では独特な服薬方法や上記の副作用の危険性について、患者さんによく理解していただく必要がございます。その為当院では7歳以上の方のみ治療を行っております。
なお7歳以上12歳未満の方でも、治療の継続や理解が困難と医師が判断した場合はお断りすることがございます。
またスギ花粉症・ダニアレルギー両方に適応がある方も治療可能ですが、開始時期については、当院では2か月ほどずらして行います。
治療にかかる費用
最初の月はアレルギーを確認する為の検査費用、処方せん料や薬局での薬代を含めおおよそ5000~8000円ほどかかります。それ以降は再診料や処方せん料や調剤薬局での薬代を含めひと月あたり2000~3000円程度です。初回舌下免疫投薬後は1週間後に、それ以降は毎月1回通院いただきます。
(上記の費用はいずれも、あくまで目安です。処置や通院の間隔によって、異なる場合がございますのでご了承下さい)
医師より舌下免疫療法について
ここまでご覧になった方は、3年間毎月通院しなければいけない事を大変と感じられたかもしれません。しかし、舌下免疫療法はきちんと治療を続けることによって、スギ花粉症やダニアレルギーが根治できる可能性のある治療法です。今まで春先に大変だった症状やダニアレルギーの症状から、4年目以降は解放される可能性があります。
もしそこまで効果が出なくても、今までどれだけ薬をのんでいても効果が乏しかった方が飲み薬1種類だけで済むといった薬の減量が可能になります。比較的簡単な治療で根治できる可能性を秘めた舌下免疫療法、是非お勧め致します。
治療の流れ
それでは実際の治療はどういう感じで進んでいくのか、治療の流れについてお話を進めて参ります。
治療手順は大きく4つに分かれます。
- 初診
- 再診(治療の意志確認、クリニック内での初回服薬)
- 再診(初回服薬後1週間後)
- 再診(それ以降)
なおスギ花粉症とダニアレルギーでは、舌下免疫療法の流れが少し違いますので分けてご説明致します。
(A)スギ花粉症の場合
1.初診
STEP1 受付にて「スギ花粉症の舌下免疫療法」希望であることをお伝え頂き、診察を受けて頂きます。
STEP2 医師が 舌下免疫療法の適応かどうかや、患者さん自身の通院への意志などを確認します。その後、採血検査(特異的IgE抗体検査)を実施します。
STEP3 舌下免疫療法への同意書をお渡ししますので、ご自宅で治療法の理解も含め、じっくりと検討して下さい。治療法やリスクを納得された場合は同意書にサインをして頂き、次回初回投与の際に、必ずこの同意書をご持参ください
♦注意!同意書にサインがない場合は、治療はできませんのでご注意下さい。
2.再診(診察2回目)、初回のクリニック内での投与
STEP1 受付にて「スギ花粉症の舌下免疫療法の初回投与」を受けたいことをお話し下さい。
♦注意!なお初回投与時は服用後30分ほど院内でお待ち頂く必要がありますので、午前中であれば午前診療では10時半までに、午後診療では17時までにご来院下さい。
STEP2 診察にて前回の採血結果を確認し、舌下免疫療法の適応、同意書のサインと内容の理解を確認後、初回投与薬シダキュアを処方します。
STEP3 初回服薬は副作用確認の為、院内でお薬を飲んで頂きます。院内でスタッフの立ち合いのもと、処方薬を舌の下に置き1分間保持します。1分経過したら飲み込んで下さい。その後5分間はうがい・飲食を控えてください。
STEP4 副作用がおこらないか確認するために、待合室で30分お待ち頂きます。万一ご気分が悪くなったら、スタッフにお声かけください。
STEP5 その後30分経過後帰宅される際にスタッフにお声かけ頂き、問題がなければ診察終了です。
3.初回投与の翌日~7日目までに患者さんにして頂くこと(毎日の薬の飲み方)
STEP1 1日1回治療薬を舌の下に置いて、1分間保持します。1分間保持したら飲み込んで下さい。投与する時間帯はいつでもよいのですが、午前中が望ましいです(副作用が起きた時の対処がしやすいため)。その後5分間はうがい・飲食を控えてください。
STEP2 服用する前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴などは避けるようにしてください。朝の投与での注意は、投与後通勤のために走ったり、その後温かいシャワーなどを浴びると副作用が出やすくなりますので、ご注意下さい。
4.初診から1週間後の再診(3回目受診)とその後
STEP1 1週間後に再診です(きっちり1週間後が無理であれば1週間以内に再診でもOK)。診察にて口の中に腫れがないか、口の中やのどや耳のかゆみ、のどの違和感などの副作用がないか確認します。
STEP2 問題がなければ、舌下錠(今回は5000JAU)を2週間処方、診察終了となります。
STEP3 2週間後再診(きっちり2週間後が無理であれば2週間以内に再診でもOK)、診察にて口の中に腫れがないか、口の中やのどや耳のかゆみ、のどの違和感などの副作用がないか確認します。
STEP4 問題がなければ、舌下錠(5000JAU)を2週間処方して診察終了です。その後4週間後再診となります。これ以降は問題がなければ、月に1回の診察となります。
(B)ダニアレルギーの場合
1.初診
STEP1 受付にてまず「ダニアレルギーの舌下免疫療法」希望であることを話して頂き、診察に入って頂きます。
STEP2 医師が 舌下免疫療法の適応があるかどうか、患者さん自身の通院への意志などを確認します。その後、採血検査(特異的IgE抗体検査)を実施します。
STEP3 舌下免疫療法への同意書をお渡ししますので、ご自宅で治療法の理解も含め、じっくりと検討して下さい。治療法やリスクを納得された場合は同意書にサインをして頂き、次回初回投与の際に、必ずこの同意書をご持参ください(同意書にサインがない場合は、治療はできません)。
2.再診(診察2回目)、初回のクリニック内での投与
STEP1 受付にて「ダニアレルギーの舌下免疫療法の初回投与」を受けたいことをお話しください。なお初回投与は投与後院内に30分間お待ち頂く必要がありますので、午前中であれば午前診療では10時半までに、午後診療では17時までにご来院下さい。
STEP2 診察にて採血結果、舌下免疫療法の適応を確認、同意書のサインと内容の理解も確認後、初回投与薬ミティキュアを処方致します。この際にダニアレルギーの舌下免疫療法を希望される患者さんは、抗ヒスタミン薬も1週間処方します。
STEP3 院内でスタッフの立ち合いのもと、まず抗ヒスタミン薬を内服します。その後待合室で15分ほどお待ち頂きます。(抗ヒスタミン薬が効いてくるまで待ちます)
STEP4 15分経過後スタッフの立ち合いのもと、今度はミティキュア(3300JAU)を舌の下に置き、1分間保持します。その後お薬を飲み込みます。その後5分間はうがい・飲食を控えてください。
STEP5 副作用がおこらないか確認するために、待合室で30分ほどお待ち頂きます。万一ご気分が悪い時は、スタッフにお声がけください。
STEP6 30分経過後、問題がなければ診察終了となります。
3.初回投与の翌日~7日目までに、患者さんにしていただくこと(毎日の薬の飲み方)
STEP1 最初に抗ヒスタミン薬を服用します。その後15分お待ちください。
STEP2 15分後、治療薬ミティキュアを舌の下に置いて1分間保持します。投与する時間帯はいつでもよいのですが、午前中が望ましいです(副作用が起きた時の対処がしやすいため。)。
STEP3 投与薬を飲み込みます。その後5分間はうがい・飲食を控えてください。
STEP4 服用する前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴などは避けるようにしてください。朝の投与での注意は、投与後通勤のために走ったり、その後温かいシャワーなどを浴びると副作用が出やすくなりますので、ご注意下さい。
4.初診から1週間後の再診(3回目受診)とその後
STEP1 1週間後に診察に来て頂きます(きっちり1週間後が無理であれば1週間以内に再診でもOK)。診察にて口の中に腫れがないか、口の中やのどや耳のかゆみ、のどの違和感などの副作用がないか確認します。副反応がなければ、1週間で抗ヒスタミン薬の内服は終了します。
*ミティキュアの副反応症状が強い場合は、次回再診までの2~4週間程の抗ヒスタミン薬の内服を続けることもあります。
STEP2 問題がなければ舌下錠(今回から10000JAU)を2週間処方、診察終了となります。
STEP3 2週間後再診(きっちり2週間後が無理であれば2週間以内に再診でもOK)、診察にて口の中に腫れがないか、口の中やのどや耳のかゆみ、のどの違和感などの副作用がないか確認します。
STEP4 問題がなければ舌下錠(10000JAU)を2週間処方して、その後4週間後再診となります。これ以降は問題がなければ、月に1回の診察となります。
よくある質問
舌下免疫療法について、よくあるご質問を以下にまとめましたので、ご参考にして下さい。
Q1いつから始められるの?
A1.スギ花粉症の場合は、スギ花粉が飛んでいる時期は治療を新たに開始することができません。また花粉症で外来診療が混雑する時期は、治療の開始はお断りしております。
ですので、当院では6月~11月末までの間で治療を開始をしております。
Q2効果はどれくらいであらわれるの?
A2.効果には個人差があり、初年度から効果が実感できる人もいれば、3年間治療しても症状が変わらない方もおられます。統計的には3年以上正しく治療が行われた場合、約8割の方が効果を実感しています。
Q3効果があるのはスギ花粉症やダニアレルゲンによる通年性アレルギーだけなのですか?
A3.その通りです。スギ花粉のエキス(シダキュア)はスギ花粉症にだけ、ダニアレルゲンのエキス(ミティキュア)はダニアレルゲンによる通年性アレルギーにだけしか効きません。
Q4舌下免疫療法に副作用は?
A4.主な副作用は口の中の副作用(口内炎や舌の下の腫れ、口の中の腫れ、かゆみ、不快感など)、のどのかゆみ、刺激感、不快感、耳のかゆみなど重大な副作用は頻度は低いですが、アナフィラキシーショックがあります。アナフィラキシーショックがひどい時には、最悪の場合、死に至る可能性があります。
Q5こどもやお年寄りはできるのでしょうか?年齢制限は?
A5. 65歳以上の方はできません。
また小児も薬剤を舌下に定められた時間保持できるかと、舌下投与前後に運動を自制できるかが投与の目安となり、当院では7歳以上を一つの目安としています。また小さなお子様では、保護者などの舌下免疫療法への理解のもと、保護者などの管理下にて服用することも重要かと考えています。
Q6スギ花粉症やダニアレルゲンによる通年性アレルギーの確定診断を受けていないが、舌下免疫療法をうけたいのですが、治療できますか?
A6. 採血のアレルギー検査で確定診断がついていなければ、自覚症状だけでは舌下免疫療法の治療はできません。
Q7年齢の問題がなく、スギ花粉症やダニアレルゲンによる通年性アレルギーの確定診断がつけばどんな人でも、舌下免疫療法の治療ができますか?
A7.冠動脈狭窄などの心疾患のある方、高血圧症でβ遮断薬を服用している方、コントロールが不良な気管支ぜんそくのある方、妊娠中の方または近いうちに妊娠を希望する方、がんの治療中の方はできません。また安全な治療継続が困難と医師が判断する場合もできません。
Q8歯の治療や口内炎など口腔内の傷がある場合は、治療を続けてもよいのですか?
A8.受診してご相談ください。歯の治療の場合は歯科医に傷の治り具合の確認が必要な場合があります。
Q9出張にもっていくのを忘れて、4日間治療できませんでした。どうしたらよろしいでしょうか?
A9. 治療の時期や中断の期間によって、再開の仕方が変わります。詳しくは受診してご相談ください。
Q10通院は毎月でないといけないのですか?
A10. 毎月1回の通院が必要です。